
神山まるごと高専はテクノロジー・デザインと起業家精神を学ぶ私立の高等専門学校として2023年春に開校した5年制の新設校である。計200人余りが学ぶ新築の大埜地校舎と旧神山中学を改修する西上角校舎・学生寮(3学年分)が鮎喰川を挟んで建ち、全体としてキャンパスの教育環境が成立する。
神山町のような人口5000人規模の地域に新しく学校をつくる価値は「まちまるごとで子供たちを育てる」ことでないかと当初考え、木造の大埜地校舎は、神山産の木材を「まるごと」使ってつくる理念とした。近隣のJAS認定製材所と2年にわたる伐採から協議を始め、様々な径の丸太を「まるごと」構造材や造作・仕上げ材に、余すことなく使う考え方を共有した。

大埜地校舎は延面積1955㎡の木造平屋で教室棟と研究棟から成り立つ。鮎喰川へとゆるやかに下る元棚田の傾斜地に配置され、周辺の景観に馴染むよう、屋根を緩勾配の片流れ屋根とし高さを極力抑えた。


教室、演習室、研究室、大講義室といった大きさの異なる諸室が様々な教育内容に合わせて可変的に使うことができるよう、また周辺の自然環境を内部に取り込めるような開放的な空間を実現するため、JAS認定製材所で生産される地元産一般スギ製材による梁材(120mm×300mm×4m)を活かした、木造レシプロカル格子梁でつくる、1.82m角グリッドのユニバーサルな大空間の組み合わせで全体を構成した。

レシプロカル格子梁で構成するユニバーサルな空間による、建築プランニングの柔軟性
基本設計初期段階に構造材の数量を製材所に伝え伐採を始めた。建物の平面モジュールを1.82mX1.82mグリッドに統一し、梁は断面を120mmX300mm基準長さ3.64m材を端部と中央を接合金物で繋ぎ、XY方向に格子状に組んで、全体で構造が成立しスパンを飛ばせる工法とした。大きさの異なる各教室空間の組み合わせが設計中多少変更になっても、上述のモジュールに載せた梁に対し柱や壁が移動するだけで、先行伐採時に算出した数量が実施設計や施工段階でも大きな違いが出ず、2期に渡る調達中の設計変更への柔軟性を可能にした。(吉田周一郎)



木造レシプロカル格子梁によるグリッドシステム
ユニバーサルな構造空間をつくるために格子梁による1.82m角のグリッドシステムを建物全体に渡って採用している。格子梁は町産スギ製材120 mm×300mm×4mを縦横に互い違いに組み立てたレシプロカル構造で構成しており、定尺材を用いながらも梁間スパン7.28mの教室空間や出幅1.82mの軒下空間をさりげなく実現している。


レシプロカル構造の施工ではいかに組立を可能にするかが課題だが、スライドで差し込める市販の梁受金物による接合ディテールを採用し、地組したH形と十字形ユニットを所定の手順で組み立てることで、組立可能にしながらも梁下端に金物やスリットが露出しない意匠性を確保している。

12.7m×14.4mの無柱空間となる大講義室は、上弦材とした上述の格子梁の下に下弦材120 mm×240mmと束120mm×120mmを配し構造用合板を張って構成した梁成970mmの合板充腹梁を単位要素として同様のレシプロカル格子梁を構成し、グリッドシステムを拡張させて大空間を実現している。(山田憲明 竹原遼)


大講義室では下弦材と合板充腹梁が足されるようになっている。
スパンと構造の違う空間がシームレスにつながっている。
神山まるごと高専大埜地校舎
| 所在地 | 徳島県名西郡神山町 |
|---|---|
| 設計・監理 | ![]() 吉田周一郎、石川静/株式会社shushiarchitects 須磨一清/Island and office株式会社 山田憲明/山田憲明構造設計事務所(構造) |
| 施工 | 株式会社北島コーポレーション |
| 木材 | 左右内製材有限会社 |
| プレカット加工 | 株式会社ケイ・アール・ケイカキハラ |
| 主要用途 | 学校 |
| 延床面積 | 1,955.61㎡ |
| 構造 | 木造(軸組構法) |
| 防火地域等の区分 | その他の地域 |
| 耐火建築物等の要件 | その他の建築物 |
| 軒高 | 4.28m |
| 最高の高さ | 4.61m |
| 階数 | 地上1階 |
| 竣工年 | 2023年 |
| 掲載誌 | 「木造建築 建築家が考える徳島2024」p8 「新建築2023年4月号」新建築社 「日経アーキテクチュア 2023 9.28号」日経BP社 「構造デザインの現場」グラフィック社 「ディテールNo.241 2024年夏季号」彰国社 |

